「Alexandrite Gala -炎の復活祭-」前幕は東京タワーから①

岡脇 柚太加

はじめまして。私はこの夏開催される「Alexandrite Gala -炎の復活祭-」のCOO兼CFOをしております。岡脇柚太加と申します。
先ずは自己紹介を。

1991年、徳島の元日生まれ

1991年元日、徳島県那賀川町という、海と川に挟まれた小さな町に生まれました。父は水産業を営み、母は専業主婦。3歳の春、母に手を引かれて近所のバレエ教室の扉をくぐったことが、私のすべての出発点となりました。

幼い私は、おそらく夢中になりすぎたのだと思います。レッスンを終えて家に戻ってからも、廊下で踊り続けていた。発表会、コンクール、遠征、母は私のバレエを支えるために、一日の大半を捧げてくれていました。

私がバレエに没頭するほど、家のなかの空気は少しずつ張り詰めていきました。父はそんな母をよく思わず、私の踊りをめぐって、家族はやわらかに、しかし確実にほどけていった。
 そのことに、私は長いあいだ気づかないふりをしてきたのだと思います。

 

14歳の春、ほどけたものの先で

両親が離婚したのは、私が中学3年生のときでした。生活は一変し、配膳のアルバイトに出るようになり、バレエは一度きっぱり手放しました。家族団欒の記憶を持たないまま、私は少し早足で大人になっていったように思います。

16歳で高校を中退し、ご縁をいただいて兵庫のバレエ学校に学費免除で迎え入れていただきました。少し早めの一人暮らしがはじまりました。早朝はコンビニ、昼はバレエ、夜はホテルの配膳。日付が変わってから帰る日々でしたが、不思議と惨めではありませんでした。「自分の人生を、自分の手で食わせている」その感触だけが、確かに私の背筋を伸ばしてくれていたのです。

 

教室をつくる、ということ

その後、海外でも舞台に立つ機会に恵まれ、22歳で帰国し東京のバレエ団に入団しました。翌年、附属のバレエスクールを立ち上げます。経営の専門家でも、なんでもありません。ただ、はじめから一つだけ、決めていたことがありました。

「ご家族の負担の上に成り立つ教室には、決していたしません」

送迎のついでに、お父さまが少しだけ顔をのぞかせる。レッスンを終えた子のとなりで、ご兄弟がはしゃいでいる。発表会の朝、ご家族みなさまが同じ方角を向いて笑っている。そうしたありふれた光景が、日常としてそこにある場所をつくりたかったのだと思います。子どもの頃の私が、喉から手が出るほど欲しかったものだからです。

ありがたいことに、その教室は現在、都内十五ヶ所にまで広がりました。レッスンを終え、生徒たちがご家族と笑いながら帰っていく後ろ姿、あの景色を見るために、私はこの仕事を続けているのだと思います。

 

興行の世界にも、同じ景色を。

そして、私がいまもう一つ向き合っているのが、バレエ「興行」の世界です。

率直に申し上げます。日本のバレエ公演のなかには、ノルマで集められた友人同士が義理で客席を埋め、身内のなかで幕が上がり、誰の心も動かないまま幕が降りる。そうした構造が、まだ少なからず残っています。私は、そうした景色を続けていきたくないのです。

2025年のイワン・ワシリーエフ引退公演で、私はその対極を目の当たりにいたしました。チケットを買い、足を運んでくださったお客様が、心の底から震え、涙し、立ち上がって拍手を送られる。その熱量こそが、引退を決意していた一人の世界的ダンサーに「もう一度、日本で踊る」と言わしめたのです。

人が本気で喜んでいる現場は、人の人生を動かす。

教室でご家族の愛が育まれるように、劇場では見知らぬ誰かの一日が変わる。そうした景色を、これから少しずつ広げていきたいと考えています。

 

そして、東京タワーへ。

この夏、私たちは大きな一歩を踏み出します。

6月27日から7月5日まで、東京タワー TOWER GALLERY にて、写真家・後藤奈津子による【Alexandrite Gala ワシリーエフ復活への軌跡】を開催いたします。世界的バレエダンサー、イワン・ワシリーエフの「引退」が「復活」へと書き換わった、あの奇跡の瞬間を捉えた写真展です。

そして8月18日からは、めぐろパーシモンホールと豊中市立文化芸術センターにて、本公演【Alexandrite Gala -炎の復活祭-】の幕が上がります。

この連載では、写真展と公演に至るまでの舞台裏、私がバレエという文化のなかで見てきた景色、そして一人の不器用な人間が「文化」と向き合ってきた記録を、少しずつ綴ってまいります。

理屈の話もすると思います。けれど根っこにあるのは、たぶんずっとシンプルなことです。

人が、誰かと一緒に喜んでいる顔が見たい。

そのために、私は明日もこの仕事に向き合います。

岡脇柚太加

◼︎「写真展AlexandriteGala ワシリーエフ復活への軌跡」2026年6月27日(土)から7月5日(日)まで

https://tta-keikaku.jp/future/1677/

◼︎「Alexandrite Gala〜炎の復活祭」公演情報はこちら

https://stage.most-arts.com/lp/love-of-my-life/

Profile

岡脇 柚太加

岡脇柚太加(おかわき・ゆたか) 1991年元日、徳島県那賀川町生まれ。三歳でバレエの扉を開け、十六歳で単身上阪。国内外での活動を経て二十二歳で上京し、翌年からバレエスクール事業を立ち上げる。現在は株式会社LaBALL代表取締役として都内十五ヶ所のバレエ教室を運営、みなとシティバレエ団を主宰する。「人が、誰かと一緒に喜んでいる顔が見たい」——その一点から、家族の愛が育つ教室と、見知らぬ誰かの人生が動く観劇体験を、仲間とともにつくり続けている。

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