「Alexandrite Gala -炎の復活祭-」前幕は東京タワーから
岡脇 柚太加
初日、二十人を超える列が伸びていた
2026年6月27日、【写真展 Alexandrite Gala ワシリーエフ復活への軌跡】が幕を開けました。
初日、開場前から二十人を超える方々が、東京タワーのフットタウン3階の廊下に静かに列を成していました。私は少し離れた場所からその光景を眺めておりました。
バレエの写真展に、開場を待って並んでくださる方がいる。ほんの数年前の私に言っても、たぶん信じなかったと思います。
列の中には、前売りチケットを目当てに遠方から来てくださった方もいれば、観光で立ち寄り、ふと足を止めてくださった方もいました。「なんだろう」と覗き込み、そのまま一枚の写真の前で長く立ち止まる。そんな姿を、この9日間で、何度も目にしました。

東京タワーは、こんなにも「人が出会う場所」だった
東京に出てきて、10年以上になりますが、正直、これまで東京タワーに足を運ぶ機会をほとんどありませんでした。近くにいる人ほど、訪れない。そのことに展示の準備で通ううちに、に気づかされました。
平日の昼下がりも、週末の夕暮れも、東京タワーの足元にはいつも、世界中からの来訪者が集まっています。言葉も装いも異なる人々が、同じ光を見上げ、同じ場所で笑っている。
ここは、私が思っていたよりもずっと、「人と人が交差する場所」でした。
東京タワーは、単なる象徴ではなく、日本の文化を世界へと発信していくハブでもある。展示期間中、私はその意味を実感しました。
舞台の外で、人が繋がっていく
展示が始まると、思いがけない再会が、次々と生まれました。

K BALLET TOKYO の山本雅也さんが、時間を作って足を運んでくださいました。本企画のアンバサダーである髙橋杏さんも来場され、写真一枚一枚に、彼女らしい真っ直ぐな眼差しを向けてくださっていました。

私自身も、この機会に、長らくお目にかかれていなかった方々にご連絡を差し上げました。学生時代の友人、かつて仕事でお世話になった方、しばらくご無沙汰していた恩人。「東京タワーで展示をしています」その一言が、驚くほど多くの再会を運んできてくれました。
会場は、いつしか写真を見る場所であると同時に、人が再び顔を合わせる場所になっていきました。その光景を、私は少し離れて見つめておりました。
TTA(「東京タワーで、あいましょう。」計画)が、東京タワーを文化発信の拠点とする意味を、この9日間で、初めて自分ごととして掴んだように思います。ここは、文化を発信するだけでなく、人と人の縁を、もう一度結び直す場所でもあるのだ、と。
会場の壁には、復活の軌跡が並んでいます
会場には、後藤奈津子が捉え続けてきた、イワン・ワシリーエフの復活の軌跡が並んでおります。
昨年、日本で行われた引退公演。川越から始まり、多くの観客の熱量が「もう一度踊る」という決意を生んだ一連の記録。そして、今年5月30日、ドバイ・オペラで行われた公演の記録も、この会場に静かに掛けられています。
一人の伝説が「終わる」と決めた場所から、「もう一度」の炎が立ち上がるまでの2年間。その時間のすべてを、後藤のレンズは、最も近い距離で見つめ続けていました。
連載の第一回で書いたこと
幼い頃、私がバレエに夢中になればなるほど、私の家族はやわらかにほどけていった、と、書きました。

あの文章を書いてから、私はずっと、ある問いを自分に向け続けてきました。
では、いまの私は、何のためにバレエと関わっているのか。

初日の列の光景、久しぶりに再会した方々が言葉を交わす場面、そして復活の記録の前で、私はその答えの輪郭に、少し触れられた気がしました。
かつて、私のバレエは家族をほどいた。 けれど今、私が携わっているバレエは、人と人を結び直しはじめている。
そのことを、東京タワーの足元で、確かにみました。

【写真展 Alexandrite Gala ワシリーエフ復活への軌跡】は、7月5日(日)に閉幕を迎えます。まだご覧になっていない方は、ぜひ最後の機会にお越しください。
そして、8月18日からは、いよいよ本公演【Alexandrite Gala -炎の復活祭-】の幕が上がります。
【Alexandrite Gala -炎の復活祭-】 8月18日(火)・19日(水)めぐろパーシモンホール 8月20日(木)豊中市立文化芸術センター
書き換えられた「もう一度」を、この夏、劇場で皆さまと共に見届けられればと思います。
この9日間、東京タワーが私に見せてくれたもの。それは、写真の力、人が再会する場の力、そして文化が人生を結び直していく力でした。
その力を信じ、広げていくために、私は明日もこの仕事に向き合います。
閉幕まで私も在廊しております。
皆様、東京タワーで、あいましょう。
岡脇柚太加
◼︎「Alexandrite Gala〜炎の復活祭」公演情報はこちら
https://stage.most-arts.com/lp/love-of-my-life/
Profile
岡脇 柚太加
岡脇柚太加(おかわき・ゆたか) 1991年元日、徳島県那賀川町生まれ。三歳でバレエの扉を開け、十六歳で単身上阪。国内外での活動を経て二十二歳で上京し、翌年からバレエスクール事業を立ち上げる。現在は株式会社LaBALL代表取締役として都内十五ヶ所のバレエ教室を運営、みなとシティバレエ団を主宰する。「人が、誰かと一緒に喜んでいる顔が見たい」——その一点から、家族の愛が育つ教室と、見知らぬ誰かの人生が動く観劇体験を、仲間とともにつくり続けている。
岡脇 柚太加
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岡脇 柚太加
TTA STORE MANAGER/ライター
ヤシキ ケンジ
岡脇 柚太加