「墨の縁」

古都京都で生まれ育った私は良縁に恵まれ、水墨画の世界に入りました。

郷里を離れた後も、水墨画を通じて日本の伝統文化に携わりたいという思いが日を追って増して行きました。

某年私は、帰郷し京都に点在するお寺を巡りました。

お寺など日本古来の文化・水墨画の魅力や伝統を多くの方々に広め、理解を深めて頂く事で、少しでもお力になれればと考えた為です。

しかし現実は甘くなく、アポイントをとるため電話してみるも取り繋いで頂けない日々が続きました。

諦めの気持ちが脳裏をよぎる中、私は東山区にある知恩院へと参り三門の真下から電話をすることにしました。

＊一般には寺院の門を称して「山門」と書くのに対し、知恩院の門は、「三門」と書きます

するとご住職様は、不意のご訪問にも関わらず、三門まで降りてきてくださり水墨画を普及したいという私の思いを真摯に受けとめて下さいました。

私は話を聞いて頂いた嬉しさとなんとしてでも伝えたい緊張で頭は真っ白でした。

その後、ご住職様から施設の館長様をご紹介いただき、その年の11月に知恩院で初めての個展を開催させて頂くに至り、以降2年に一度、個展開催を続けさせて頂いております。

私の思いは今では現実のものとなり、多くの方々と交流を深めることが出来ております。

これからも貴重なご縁に感謝を申し上げ、作品を通して水墨画の普及に努めて参る所存でございます。
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