「決めてくれた人生」
衣装デザイナー、スタイリスト
高橋 毅
あなたのお気に入りの T シャツはどんな T シャツですか?
と聞かれたら何て答えますか?
その T シャツとの出会いや入手のきっかけなど、好きなものであれば何かしら歴史があるはずであろう。
1976 年、セディショナリーズの「GOD SAVE THE QUEEN」のガーゼシャツはファッションに興味のある人なら知っているはず。
それを生み出したヴィヴィアン・ウエストウッドとマルコム・マクラーレンが世界中にパンクファッションを知らしめた功績はあまりにも大きく、約 50 年経った現在でもその影響力は衰えていない。
ブルース・ウェーバー、ロバート・メープルソープ、リチャード・アヴェドンなどのファッションフォトグラファーのフォト T。
ニルヴァーナ、ビョーク、レッドホット・チリ・ペッパーズ、ウータンクラン、ナインインチネイルズなどのミュージシャン T シャツ。
パルプ・フィクション、トレイン・スポッティング、レオン、シザーハンズなどのムービーTシャツ。
エヴァンゲリオン、攻殻機動隊、ジブリ関係、そして AKIRA というアニメ、漫画 T シャツ。
これらに共通して言えるのは、世界的に影響を与えたカルチャーとしての影響力を持つということ。
セディショナリーズは 70 年代だが、その他の T シャツは 80~90 年代のものがほとんど。
そしてこれらは現在「ヴィンテージ T シャツ」というジャンルとなり、その希少性に想像以上の付加価値がついている。
需要があるがアイテムは生産されていないので、値段が高騰するのも当然だろう。
オリジナルにこだわらず、リプリント、後発ライセンシーやレプリカでも気にしなければそれでも良い。
しかし、本物を知ってしまったが最後、やはり本物を見たくなってしまうという魔法のようなものがあるのがこのカルチャーの恐ろしいところだ。
とまぁ色々ありますが、実はそんなことはどうでもいい。
大切なのは「そこに自分のスタイルがあるかどうか」が重要だとスタイリストという業種の立場としてはっきり言っておく。
「それを着ているからおしゃれ」ということでは全くない。
好きなものは好き!と自分の好きなものを信じられるか。
時代や流行に臆することなく、自信を持っていつものように好きなものを着る。
それが見つかれば幸せだ。
ちなみに私は「AKIRA」のTシャツ1 択だ。
Profile
高橋 毅
衣装デザイナー、スタイリスト
武蔵野美術大学卒業後スタイリストに。代表作として「JOJO×資生堂」「sony playstation×米津玄師」(広告賞 ACC にて衣装賞受賞)。
ここ数年は衣装デザイナーとしての活動が多い。
他に Aimer「残響散花」、舞台「ピーターパン」、三浦大知「over」ツアー衣装など多数。
とにかく絵を描くのが好きなスタイリスト。