巡業とお土産

書家

白鳥珀亭

私の旅は出張がほとんどで、多くは歌舞伎公演の全国ツアーに同行した経験だ。

「巡業」と呼ばれるこのツアーは、歌舞伎役者が一座を組んで全国各地の会館で芝居をする巡業公演で、毎年夏から秋ごろにいろいろな地域を巡る。会場は地域のホールや会館、文化財になっている古い芝居小屋など。お客さんは地元の人たちがほとんどで歌舞伎を初めてみる人も多い。お姫様に「きれい」と声を漏らしたり悪人が成敗されると拍手がおきたり、リラックスして歌舞伎を純粋に楽しめるとてもいい公演だ。

 しかし、巡業はスタッフにとっては体力勝負の大変な公演だ。これは私が同行していた当時のイヤホンガイドの動きだが、当時はハイエースのバンに機材を積み、巡業コースをまわった。まず公演の3~4時間前に会館に入り、機材や売場の準備をする。公演は1回または2回行われ、終演後すぐに機材を撤収。車に積み込み、次の公演地近くのビジネスホテルへ向かう。ホテル到着は夜遅くなることが多く、食事は国道沿いの深夜営業のチェーン店が主。その後コンビニで朝食用の食べ物を買ってホテルへ戻って寝る。現在は車ではなく新幹線など電車移動になったが、だいたい同じだ。観光などはほとんどできず食を楽しむことも難しい。2週間も会館→コンビニ→ホテル→会館…の三点ループを繰り返すと、みな同じに思えてどこがどこやらわからなくなる。

 そんな巡業の楽しみは会館の売店やインターチェンジで売ってるその地域ならではのお土産やお弁当だ。新潟の会館では「売店のおむすびがおいしいから絶対食べろ」と先輩からの口伝がある。インターチェンジではご当地アイスをよく食べた。お土産もよく探した。琵琶湖のある滋賀県大津のインターチェンジで大津絵の絵葉書を見つけたときは稲葉さん(推し)と遭遇レベルで興奮した。大津絵は江戸時代から定番の土産物で、歌舞伎にもよく登場する。当時は歌舞伎を見始めたばかりだったので特に嬉しかったんだと思う。

最近買わずにはいられなかったおみやげが、このレゴのキーホルダーだ。

江戸時代、唐辛子売りという行商人がいた。粉唐辛子を小袋にいれ、巨大な赤唐辛子の張子(180cm程)の中に積めて「とんとん唐辛子~」と売り歩いたそうだ。ネットでは真っ赤な衣装を着ているイラストも表示される。

私はレゴにどうして作ったのか聞きたいくらい気に入ったのだが、家族は微妙な反応だった。

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【展覧会情報】
2024年4月1日~5月6日 白鳥珀亭「昔ばなし」展 @ 東京タワーフットタウン3F TOWER GALLERY
2024年4月25日~4月26日 白鳥珀亭「茶会」サテライト展 @ 北鎌倉 宝庵

Profile

白鳥珀亭

東京生まれ。
京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)芸術学部 歴史遺産コース卒業
歌舞伎座番附を担当する勘亭流書道研究会所属 2003年入門・2009年名取り
歌舞伎・文楽公演の劇場で同時解説サービスを行うイヤホンガイドの解説者としても活躍。

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